2001年6月5日号
体験交流と民泊を
地域に広げた、森の哲人

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栗田和則さん |
(写真)「山里の案内人」の皆さん(写真右から、栗田和則さん、栗田キエ子さん、片桐ツネ子さん、片桐久志さん、栗田ツネエさん、栗田梅吉さん、栗田貞治さん) 1944年、山形県金山町生まれ。農林家。自前のログハウスを拠点に「暮らし考房」を主宰する。その他、「共生のむら すぎさわ」代表世話人、「山里フォーラム
in かねやま」実行委員長、東北農村文化協会代表委員などを務め幅広く活躍中。その多彩な活動が評価されて、平成12年、妻のキエ子さんとともに「NHK東北ふるさと賞」を受賞した。 |
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「まず、一杯どうぞ」。
「暮らし考房」の主人、栗田和則さんは、話し始める前、小さなグラスに透明の液体を注いですすめてくれた。口に含んでみるとほのかに甘い。「メープルサップ、つまりイタヤカエデの樹液ですよ」。これは、3月頃に採れるもので、煮詰めれば琥珀色のメープルシロップになる。春の訪れを予感させる、森の天然水。自然の恵みを知り尽した人ならではのおもてなしだ。
栗田さんは、築200年にもなる茅葺きの家で暮らしながら、林業を主な生業としてきた。平成5年、敷地内に建てた2棟のログハウスを拠点に「暮らし考房」を設立。妻のキエ子さんとともに、染め物体験や森遊び、民泊、農業研修の受け入れなどを始めた。
農林家の栗田さんがこうした交流活動に取り組むようになったのは、地域に恩返しをしたい、という思いから。
「一般に山村は貧しいと思われていますが、そんなことはない。豊かな暮らしを持っています。そのことを外に向けて発信していきたかった」。
山里ならではの自然体験と栗田夫妻の温かな人柄、心和ませる杉沢の風景が人気を呼び、考房を作って数年もすると年間800人もの人々が訪れるように。
やがて、地域への恩返しという言葉どおり、栗田さんは、杉沢地区の人たちに呼びかけて交流の輪を広げた。そうしてできたのが「共生のむら すぎさわ」である。刺し子やつる細工作り、山菜採り体験、民泊、「山里の案内人」「森の案内人」制度など、みんながそれぞれの特技を披露したり自宅を開放したりして、地域全体でお客さんを迎えた。山奥の小さな集落は活気づき、おじいちゃんおばあちゃんも名刺を作って自己紹介した。
「森の案内人の若者は、『当たり前にやってきたことを、みんなが感心して聞いてくれる』と嬉しそうに話します。都市の方々との交流を通して、杉沢の人たちは、自分たちの暮らしに自信を持ったようです」。
ここ数年、農山村に泊まって余暇を楽しむ「グリーンツーリズム」が人気だが、栗田さんは、独自の宿泊スタイルを実行していることでも注目されている。それは「会員制の民泊」。いわゆる農家民宿のようだが、営業行為か否かという点で異なっている。「民宿」は不特定多数を対象にした営業行為であるのに対して、「民泊」は特定少数の会員が対象で営業行為はしない。このため、民泊なら許認可申請も必要ない。
「農家民宿を開業するには、改築や新築をしてさまざまな許可を得なければなりません。これが大変でお金もかかるため、なかなか開業できない、という相談をよく受けます。そこでそういう方には、練習の意味でも民泊から始めてはどうかと勧めているんです」。
都市との交流を、考房から地域全体へと広げてきた栗田さんだが、だからといって、必要以上のお金をかけ無理をしてまで受け入れようとはしない。大切なのは、自分たちの日々の暮らし。山里のもつ豊かさもそこにある。
8月25・26日には、哲学者の内山節さんを迎えて8回目の「山里フォーラム in かねやま」が開かれる。また、来年4月に考房設立10周年を記念して、メープルサップ祭を企画中だとか。これからも考房という1本の樹からたくさんの出会いの種が生まれ、カエデの種のように空を舞って、いつかあちこちで新しい芽を出すにちがいない。
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