2001年1月30日号
採算合わないけど、やってて楽しいのは民家だね
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熊谷秋雄さん(36歳) |
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日本で唯一の茅葺き屋根工事専門会社 問/(有)熊谷産業 |
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熊谷秋雄さんが茅葺きの仕事を始めたのは平成2年、26歳の時だった。
県北の新北上川(追波川)の辺、北上町。熊谷家は川に茂る豊かな葦原を見ながら暮らしてきた。50年ほど前から父親の貞好さんが、農業をやりながら茅葺き屋根工事を始めた。その頃は町にも茅葺き屋根が多く、同業者も7軒あったという。
「小さいころは嫌でしたよ。遊びたいのに無理やり手伝わされて。23歳の時から3年間、海外青年協力隊に入ってフィリピンに行った時、考えが変わりました。日本の伝統技の素晴らしさに気がついたんです」。
平成2年、帰国すると、父親と兄が先細りの家業に見切りをつけようと話し合っていたところだった。秋雄さんは説得して続けることにする。ばかりか茅葺き専門の会社として再スタートを切った。もちろん、日本で唯一の茅葺き専門会社だ。父親が社長、兄が専務、秋雄さんは常務となったが、実質上会社の牽引役として経営を管理し、若い者に技を伝え、一緒に出稼ぎをする。
仕事は役所がらみの文化財から民家まで。
「役所がらみの文化財は金銭的に安心だけど、やっていて楽しいのは民家だね。その家の漬物なんかご馳走になって何百年生き残ってきた家の歴史や暮らしぶりなんか聞けたりして。でも採算は合わないんですよ。半分ボランティア。我々も茅葺き残したいしね」。
高度成長期からバブルの時代にかけて職人が消えた。3Kを嫌う若者たちは都会の楽に稼げる職場に流れ、残った職人たちは年老いた。
今、しかし職人の世界に若者が戻ってきているといわれる。熊谷産業にも高齢の職人たちはいるが、4、5年前から若者が参入している。学卒、専門学校卒の20代が4人。今年の4月には筑波大大学院の新卒が入る。
「女性もOKですよ。イギリスには茅葺き職人の女性が20人います。ここにも4人ほど見学にきたけど、そのままプッツンだったね」。
熊谷さんは、しかし悩んでいる。
「この仕事に魅力を感じてやってきた若者たちに応えて、経営を維持していかねばならない。そのためには年中仕事をとらなければならないし、民家などの修復は採算合わないし。農業と同じで、中国産の葦のほうが国産の半値なんです。民家の修復を安くあげようと思ったら輸入のほうがいい。でも目の前にこんなにいい川と葦があるのに…」。
びょうびょうと繁る葦原を見ながら熊谷さんはうなった。
葦は燐や窒素を吸収、分解して川を浄化する。その葦を刈って使うことで、また新しい葦が生える。葺きかえた古い茅は畑の肥料に使う。そのように自然のサイクルに添うことで人も川も生きてきた。それを大切にしたいと熊谷さんは考えるのだ。
「親父(社長)は輸入に絶対反対です。でも、ポリシーはいいけど、現実との調整をどうするか。まだ答えは見つかりませんが、ドイツ、イギリスの工法や住まい方を勉強しながら道を探っていきたいと思っています」。
正月明けにはハンガリーとウイーンに勉強に出かけた。2月からは伊勢神宮の葺き替えが待っている。注:茅葺き材料は葦(川茅)ススキ(山茅)。葦やススキは屋根に使われて茅葺きと呼ばれる。
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